社長挨拶

「魚」を「旨く」すると書いて「鮨」。この鮨（すし）という食べものが、日本における食の豊かさと美学を体現しています。そのまま食べても十分においしい獲れたての魚や野菜を、よりおいしく味わってもらうために仕事を施し、もてなしの食卓を整える。
わたしたちアミノの基本理念に、－「働く」ことは「傍（はた）」を「楽（らく）」にすること、傍にいる大切な人を楽にしてあげること－という考えがありますが、誰かのためにおいしさと楽しさを追求する飲食店は、まさに根幹を同じくするものだと考えています。求めているのは、人のための努力を自分のための努力と同じように考え、実行できる人。家族を想い、ともに働く仲間を想い、自分の手掛けた寿司を食べてくださるお客さまのことを想いやれる人です。

大切な誰かのために。
働くことは、「傍（はた）を楽（らく）にすること」

わたしにとっての「働く」ということ。その原点は、家族です。わたしが幼いころ、うちは石巻卸売市場の近くにある小さな寿司店でした。父が大将で、母がおかみさん。従業員も親戚や長く働いてくれている人ばかりで、店全体が家族のようでした。子供だったわたしは、そんな「家族」がお互いの仕事を助け合うようにして働き、お客さんに喜んでもらおうと店づくりしている姿を毎日見るうちに、自然と「ああ、“働く”ということは、傍にいる大事な人を楽にしてあげること。“傍楽（はたらく）”ということなんだなあ」と思うようになったんです。この思いは、アミノの大切な根幹。
アミノで働く人すべてが、身近な誰かを助け、楽にしてあげることを考えながら働くことは、自分自身の成長へと繋がり、巡り巡って自分を楽にしてくれるものです。そしてその想いは、一緒に働く仲間やその家族、お客さまや地域社会をも健やかで安らかな“楽”で繋げてくれるものだと考えています。

店舗の数が増え、扱う魚介の量が増えるということは、職人が技術を磨く機会が増えるということです。魚の捌き、そして種の仕込みは、どれだけの数を経験したかで熟達度に大きな差が出るもの。短い旬を追いかけるように多種多様な魚介を扱う寿司店ですが、「うまい鮨勘」では一般の寿司店の数十倍の数を仕込むわけですから、熟達の進度もとても速い。そうした職人の成長の進度と精度を上げるとともに父が目指したのは、「板前をはじめとする全従業員の社会的地位を上げる」ことでした。かつて料理人は、自分の店を持って初めて一人前、というような、まだまだ発展途上の立場でした。ホールで働く人たちも、一般の会社員より一段低く見られがちでした。しかし父は、繁盛店をつくることで従業員の好待遇を実現し、「うまい鮨勘」で働くことは高ステイタスだ、という意識の変革を行なったのです。実際、かつては板前という職業では通りにくかった住宅ローンが「うまい鮨勘」の板前なら、と通るようになり、若くして一軒家を建てられるようになったのもこの頃からです。

新しく変えていくべきものと、大切に守り継がねばならないもの。その両方に力を注ぐタイミングだ、と。わたしが就任して最初に行ったのは、全スタッフから時間を戴いてひとりひとり面談をし、「アミノでどう働きたいか」を聴くことでした。スタッフはみんな、多くの時間を職場で過ごします。その時間をよりよいものにすることが、職場の質の向上、そしてお客さまに対するサービスの向上にも繋がります。あの時にスタッフからの言葉を書き留めたノートは、私の社長としてのスタート地点であり、まさに会社の宝ですね。